科学部地学班の1年生3名は、第一高校地学部の生徒と合同で、①熊本地学会の巡検会と、②野外巡検に参加しました。
①熊本地学会巡検(御船町恐竜博物館巡検)
午前中の学会の巡検会は、御船恐竜博物館にて行われました。
講師は、御船町恐竜博物館の主任学芸員である、池上直樹先生です。高校生のために、特別に講演をして下さいました。
写真:御船町恐竜博物館の池上直樹 博士(理学)
写真:講師の話を聞く生徒たちの様子
御船だけでなく海外(モンゴルやアメリカのモンタナ)の恐竜化石産地と比較して、発掘現場の様子の違いや発掘の作業方法について、実際の写真を多く見せていただきながら、分かりやすく学ぶことができました。そして、発掘された化石のクリーニングや、標本の登録など、化石が展示に至るまでの過程についても学びました。さらに、御船で発掘される化石(ガー、スッポンモドキ、ワニ類、恐竜類)についても話をして下さり、これらの化石が白亜紀のベーリング陸橋の接続について知る重要な手がかりとなることなど、古生物を研究する面白さに触れました。
他にも、大学受験時や大学時代の話、研究者(学芸員)になった理由など、高校生が気になる進路面や学問についての話もうかがうことができました。
講演の後は、博物館のバックヤードを見学させていただき、展示する前の標本がどのように整理され、標本として登録されているのか、実際に見せていただきました。展示前の、貴重な標本を多く見ることができ、生徒は感激していました。
② 野外巡検会(砥川溶岩からなる北甘木台地と、北甘木断層)
午後からの野外巡検は、熊本地学会会長である鶴田孝三先生と事務局のお二人に案内して頂きました。
写真:鶴田先生から周辺の地形や地質を見ながら、解説を聞いている様子(場所:上益城郡嘉島町井寺の浮島神社)
写真:鶴田先生からパソコンの画面を見ながら、解説を聞いている様子(場所:上益城郡嘉島町井寺の浮島神社)
この付近には、砥川溶岩でできた北甘木台地があります。砥川溶岩とは、赤井火山から噴出した普通輝石紫蘇輝石安山岩質の溶岩で、多孔質であることが特徴です。熊本市内の地下水の帯水層としてよく知られ、大変重要な地層です。
ただ、この台地と平野部の境界は直線的であり、その原因は、熊本地震を引き起こした布田川断層の副次断層だと考えられ、北甘木断層とよばれています。この断層運動により、断層より以北は地溝状の凹地を形成しており、台地と平野部との境界は、断層崖であると考えられます。今回は、砥川溶岩と断層地形を観察しました。
写真:左側手前の表面が平らな山が船野山、その左の低地に砥川溶岩を噴出した赤井火山の火口が位置している。右側の盛り上がった山が飯田山で、恐竜が眠る白亜系の御船層群からなる(浮島神社から東側を撮影)
写真:砥川溶岩からなる北甘木台地と北甘木断層による断層崖(だんそうがい)を観察する様子
白川には、河岸段丘が見られますが、川を挟んで両岸の段丘面の高さが同じではないため、その後の断層運動による変位の影響を受けているのではないかと考えられる、との話もされていました。野外で実際に地形や地質を観察しながら、熊本平野付近の大地の成り立ちについて学ぶことができました。
コロナ禍の中で、野外で実際にものを見て、専門家から話を伺う機会がなかなかなかったので、本日の学習会は、生徒にとってとても興味深いものでした。梅雨時期のとても蒸し暑い一日でしたが、真剣に講師の話を聞く生徒の姿が印象的でした。
生徒は、「第一高校の生徒との交流も新鮮でとても楽しかったです。このような機会があれば是非参加し、自然に対する理解を深めていきたいです。」と感想を述べていました。
写真: 第一高校地学部の生徒と一緒に記念撮影(御船町恐竜博物館の入り口付近にて)
(投稿:科学部地学班顧問 本多)