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【高校】科学部地学班 地質巡検会に参加!

熊本地学会が主催する地質巡検会に参加しました。

令和6年度第3回熊本地学会の巡検会

令和6年12月1日に行われた令和6年度第3回熊本地学会の巡検会に参加しました。

講師は、元熊本大学教育学部教授の田中均教授です。

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まずは、集合場所である宇城市総合庁舎にて、顔合わせと自己紹介を行いました。

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砥用層上部層中の低角度断層

白亜紀前期のアルビアンとよばれる時代の地層である砥用層の中に見られる、低角度断層を観察しました。

断層面は立っていることが多いのですが、断層面の角度が浅いものを、低角度断層と言います。ここでは断層面が水平に近くなっており、上下で地質が異なっています。

観察した露頭のある場所は、山都町の内大臣橋付近です。

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目がくらむような緑川がつくった深い谷にかかる橋ですが、河原の様子や集落の棚田、赤や黄色に紅葉した山々など、とても景観はきれいでした。

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数年前に甲馬隧道西尾谷川坑口が崩壊したことで、露頭の上部の様子が見えるようになったそうです。

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現在は、再び崩壊が起こらないように吹き付け工事が行われているため地質の様子を見ることはできませんが、上下を分けるものが水平方向に走っており、付近には断層ガウジと思われるような濃藍色~暗黒灰色をした粘土質な部分が2~3mの厚さで挟まっていました。

下には泥質の堆積岩、上には蛇紋岩があり、地質が異なります。これらの特徴から、低角度断層と考えられます。

この低角度断層か、それに副次する断層が他に見られる、ということで沢を上って露頭観察を行いました。

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先日まで続いた雨で、沢を流れる水の水量が増し、濡れた岩石の上は滑りやすく、慎重に沢を上りました。

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露頭では、低角度の断層破砕帯が見られ、上下で地質の連続性は断たれていました。

地層の走向傾斜は、N72°E,18°Nと傾斜が緩いことが分かります。

中央構造線をご存じでしょうか。中央構造線は、西南日本を関東から九州まで横断する第一級の断層です。断層運動により、これより北側と南側で地質帯が大きく異なるため、北側を内帯、南側を外帯とよび分けています。

大分県のある場所では、外帯の地域であるのにも関わらず内帯にしか分布しない化石群が見つかるそうです。

そのようなことを可能にしているのが、中央構造線の断層運動であり、断層面が大変緩い状態で、内帯のものが内帯側へと低角度でのし上げます。

その後、風化侵食によりのし上げた内帯側の地質の大部分は削剥されたが一部が残り、外帯の中に内帯の地層がぽつんと分布するようなことが起こるのだろうと、田中先生は考えていらっしゃいます。

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熊本では、ちょうどこの山都町でまさにそれが見られるわけです。低角度断層の下位にあたる地質は、白亜紀前期のアルビアンとよばれる時代の外帯の堆積層である砥用層です。その上の蛇紋岩などの地質帯は、内帯側のものであるそうです。

中生代という古い時代から動いているとされる中央構造線のずれた面を利用して、新生代に日本海の拡大時やその前の時期などに、低角度で内帯の地質が外帯側へとのし上げたと考えているそうです。

昼食

内大臣橋の袂近くには、転石と思われる巨大な石がありました。

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阿蘇火砕流堆積物と思われる岩石で、大きな黒曜石レンズが入っていました。

よく見ると、レンズの中に、火山豆石が見られました。火山豆石は、火山灰でできた豆のような形状をした石のことです。

大気中を浮遊する火山灰が水滴などを凝結核として集まり、球状になりました。

流れてきた火砕流に、上空でできた火山豆石が落下し、それらが一緒に固結したことが分かる岩石です。

形成過程を考えると、とても面白いと思います。

砥用層中のアンモナイト化石採集

美里町一之谷の上流域において、そこに分布する砥用層の最上部付近と思われる地層から、アンモナイト化石を探しました。

小さく、なかなか見つけるのは簡単ではないが、よく探すと見つけることができる、ということでした。

生徒たちは、一生懸命に露頭をハンマーで叩いて、割れた面をよく観察しながら、アンモナイトなどの化石が入っていないか探しました。

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結局30分くらいの時間で、5固体ものアンモナイトが見つかりました。

種の同定はできませんでしたが、どれも同じような形態をしていたので、同じ種だと考えられます。

肥後変成岩の大理石採集

豊野町上郷付近で、山林の伐採により観察しやすくなった大理石を観察しました。

大理石は、石灰岩がマグマによる熱をもらったことで、再結晶化して炭酸カルシウムが粗粒な方解石の結晶をなした結晶質石灰岩のことです。とてもきれいな白色をしていて、よく目立っていました。

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閉会

今回の巡検会は、大変玄人向きの内容でしたが、野外での活動は大変刺激的であり、非日常を感じ、視野が広がったのではないかと思います。

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今後も巡検会に参加し、地質の面白さが感じられるようになりたいですね。

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講師の田中先生をはじめ、優しく教えてくださった学会員の皆様、大変ありがとうございました。

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